クロスコミュニティは社会をどう変える!? −−樋谷祐希さんに聞く、社会課題を解決に導くプラットフォーム

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地域課題や社会課題を解決していくには、若い力とクロスコミュニティが必要とされる時代。制度や立場にとらわれない社会貢献型事業を運営するベンチャー企業は、果たして社会をどう変えていくのでしょうか?樋谷祐希さんにお話を伺いました。

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クロスコミュニティが社会課題解決に良くある理想論を現実化する強力なプラットフォームになる。

Q.そもそもクロスコミュニティというものに着目されたのは、なぜですか。
樋谷:大学を卒業してすぐ就職はしなかったのですが、現在に至るまで様々な業種・働き方を経験してきました。そんな中で、どんなにやりたいことがあっても個人の能力や動きの幅には限界があると感じていました。素晴らしい発想があっても実現できなかったり、情報発信しても誰も反応してくれなくて諦めてしまったり。それで、意思のある個人が埋もれてしまわないように、ボトムアップできるような仕組みはどうやったらできるのだろうかと考えるようになりました。そんなときMUPカレッジの『クロスコミュニティ』という考え方に出会った。これだ、と思いました。クロスコミュニティは、今まで区別化されていた社会課題の枠を超えて、あらゆる個人や団体、企業がお互いのエクセル(優れていること)を掛け合わせるものだと確信したのです。
また、自分の生い立ちも要員の一つです。3人兄弟の末っ子で年上の人と接する機会が多く、学生時代も同級生よりもバイト先の社会人や先生たちと関わることが多かった。明らかに自分より上の世代を関わっていると、新しい流行やネット機器などにも適応が早く、年上の人たちが知らない情報を説明するといつも自分に関心を持ってくれた。そんな2つの要因によって、クロスコミュニティがこれからの時代の革新を起こしていくキーワードだと思いました。

Q.クロスコミュニティの考え方や動きは、今どのくらい広がっているのでしょうか?
樋谷:認知度はこれから高まっていく部分が多いと思います。言葉からなんとなくのイメージは伝わるでしょうが、本来意味や可能性に深い部分で気づいている人はかなり少ないと思います。逆に、勢いがあって、うまくいっているコミュニティや企業はクロスコミュニティをいうものの考え方をうまく取り入れている気がします。例えば「ABCクッキング」や「ヤマハ音楽教室」、「西野亮廣エンタメ研究所」などがあります。ABCクッキングは、使ってみないとわからない調理器具を料理教室としてユーザーに使用体験させることで販売へとつなげる。ヤマハ音楽教室は、高額なピアノの販売につなげるため子どもの時にまずは体験させることでピアノのセールスにつなげる。西野亮廣エンタメ研究所は絵本をたくさんの人が制作に関わることで購入者層を作り出している。複数の物が組み合わさったモデルで成功しているケースは、多くがクロスコミュニティ提供者のしっかりとした戦略があるように感じます。

クロスコミュニティで、コミュニティの流動性を活性化する

Q.クロスコミュニティの浸透によって、社会はどのように変化していくと思いますか?
樋谷:コミュニティはそもそも、自発的な意思で集まる個人の集合体でした。尊敬できる「人」で集まる、「好きなこと」で集まる、「価値観」をシェアする、仲間で「試行錯誤」する、「ジャンル発展」に貢献する、「地域・環境」を更新する、「社会課題」に貢献するなど、人材やリソースの「自発的な」シェアリングエコノミーの可能性を持っていました。しかし、1つのコミュニティの中に閉じこもり、閉鎖的なコミュニティが長期化することによって、「内に閉じこもりがち」「マンネリ化」「権力/派閥争い」などの悩みも生じるようになりました。
つまり流動性がなくなってしまう現象が起き始めたんです。それを解決するのがクロスコミュニティという概念です。クロスコミュニティでは、異ジャンルのコミュニティが出会い、自由に共有・拡散したり、テーマトークをする機会ができ、「自分のコミュニティのアップデート」につなげる、いわばコミュニティのシェアリングエコノミーなんです。人それぞれコミュニティごとに「やりたいこと」「できること」があるので、それらが自然と集まって、様々なコラボレーションが生まれていく、要はそれぞれがいろいろ持ち寄って「楽しみながらやっていく」というという形になっていきます。

Q.クロスコミュニティによるコミュニティのアップデートやコラボレーションに大きな価値があるわけですね。
樋谷:組織やマーケティングなど、様々な観点で変化が起こってきています。これまで資本主義の中では中央集権的な権力の方向性でその原動力となっていたのはトップダウンや指示命令によるものが多く、いわばヒエラルキー(ピラミッド型の階層)的な組織図になっていました。売り上げや利益、実用性といったいかにマネタイズできるかが求められ、プラットフォーマーが主な利益の受給者となっています。より影響力を持ったり成果を上げるためにはマスメディアを使った広告戦略といったマーケティングが用いられ、競争によって経済が回っていたのがその特徴です。しかし、これからくるポスト資本主義、いわば分散型社会では非中央集権となり人々はビジョンや熱狂、日常の疑問から行動を起こすようになります。社長や上司がマイクロマネジメントをしなくても、目的のために進化を続けるティール組織へと移行し、その組織は指示系統がなく、メンバー一人一人が自分たちのルールや仕組みを理解して独自に工夫し、意思決定していく。実用価値や内面価値、社会的価値を求め、それぞれの参加者が利益受給者となる。ここでは、コミュニティやマイクロインフルエンサーがマーケティング手法となり、共創によって経済が回っていく仕組みとなっている。
例えば、買い手が売り手を探すインテンションエコノミー、「与えること」が当たり前・「私有」の感覚が小さく「共有」の感覚が大きいギフトエコノミー、肩書きのような「点」ではなく有機的なつながりで「複業」をするコミュニティ間コラボレーションなどがいい例である。つまり、従来の社会とは組織やマーケティングなど、様々な観点で変化が起こり始めます。

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独占や制限から解放されあらゆるモノとコトがクロスし始める

Q.非常に魅力的な考え方ですが、自分のオリジナルの情報を共有するのは抵抗があるような気もします。
樋谷:それこそ独占と所有は戦後の経済成長の中で競争社会が作り出してしまったモノではないでしょうか?今みたいにインターネットやSNSがここまで発達していなかった頃は、情報が価値を持っていました。他の人が持っていない、他の企業よりも早く情報を得る、これは情報戦略で戦争に勝利し領土を広げて行ったナポレオンの戦略と同じようなものです。しかし今の時代は違い、10秒前の出来事を地球の裏側で知ることができます。
つまり何を言いたいかというと、情報自体には価値がなくなり、その情報をどう活用し何を作っていくかが価値になるのが今の時代だということです。「これは新しいアイデアだ」と思うようなことであっても、地球上に60億人も人がいれば、その時既に世界中で数え切れないほどの人があなたと同じようなアイデアをもっています。1つの情報を持っていることよりも、複数の情報をそれぞれ多角的な視野からみて、組み合わせることでようやくオリジナルの新しい価値が誕生します。
あらゆる情報を一瞬で手に入れることができるようになった結果、情報を持っていることよりも、手に入れた情報を元に誰とどんなものを作り上げていくかということの方が高い価値を持ち、社会には必要とされるのです。それはまさに、クロスコミュニティの理にかなっています。

「For Spacific Person」と「Passion」がクロスコミュニティのキーファクターになる。

Q.クロスコミュニティが社会に根付いていくために、特に重要なことはなんですか?
樋谷:1つは「For Spacific Person」です。ある特定の人という意味で、あらゆるサービスがある今の時代、あやふやな考えや誰のためにあるサービスなのか良くわからないものは人の興味には引っかかりません。クロスコミュニティの中でもみんなそれぞれ何かテーマを持って活動をしている場合が多く、全員の興味を引く必要はありませんが、100人のうち1人に強烈に引っかかればその1人は強力なパートナーになります。そういう意味で、そのアイデアや活動は具体的に誰のため、どんな人のためにやっているのかをはっきりさせることが大切だと考えています。また、passion、情熱も大切になります。これは言い換えると信頼というものにもつながっていくかもしれませんが、物事を動かしいくにはものすごいエネルギーを使います。0から1にする時にエネルギーを使い、途中壁が現れた時にまたエネルギーを使い、いま目の前に起きている課題を解決するためには情熱がないとすぐに楽な方にそれてしまいます。僕も経験がありますが、毎回言うだけ言って途中で逃げたり、行動しない人には可能性を感じませんよね。その情熱を持ち続けて、諦めずにやり続けている人には必然的に周りからの信頼が蓄積され、その人の行っている活動やプロジェクトに期待や信頼が生まれてきます。クロスコミュニティではこの2つが重要なキーファクターになります。

Q.確かに、経済の停滞や少子高齢化などにより社会不安が高まっています。クロスコミュニティによってそのような社会課題も、解決できるのでしょうか。
樋谷:特に高齢者の生活支援の分野においては、日本全国で地方自治体が主となって様々な取り組みを行っていますが、国と現場のサポート人材確保やサービス提供との間に方針の大きな乖離がありほぼ全ての地域で課題を残す結果となっています。地域では自分の力や能力を活用したいという人材は多くいるのにも関わらず、トップダウン式のコントロール系統で行われている行政活動では、諸々の地域・社会課題が解決へと向かわないのは無理もありません。行政が下手に指示命令系統の仕組みを新たに作るよりも、既に地域に根差している企業やコミュニティの活動の長所を集め、地域特性に合わせたクロスコミュニティを形成し、そこに対して行政がお墨付というバックアップで支援するといった形がこれから必要とされるでしょう。